病院・診療所の労務問題(従業員のSNS管理・対策)
Q.北海道で訪問診療中心のクリニックを開いている医師です。当院の従業員がLINEのグループチャットを使用して申し送りや連絡をしているようです。患者の個人情報が漏洩した場合に責任問題になることが不安です。誓約書のようなものを書いてもらってSNSの使用をやめさせることはできないのでしょうか。
従業員によるSNSの使用の利便性と問題点
2012年くらいまでは「従業員と思われる者のブログや匿名掲示板(2ch)への書き込みをどうにかしたい」というような相談が多かったのですが、最近はLINE等のSNSの使用についての相談がほとんどです。
LINE等のチャットシステムは特に訪問診療などを行っている病院・診療所ですと従業員間での連絡が簡単で非常に親和性が高いようです。
「電話・メールするほどの用事じゃないことを簡単に伝えることができる」、「相手に伝わったかどうかが簡単にわかること(既読機能)」 などが日常業務で使用する際に使い勝手がよいようです。
「夜中や早朝でも比較的相手に気兼ねせずにメッセージを送れる」、「メールのように書き出しなどを考えなくてよい」というのは確かに訪問診療とは相性がよいでしょう。
ただ、 管理者である院長先生の立場としては困ることもあります。多くの場合は、従業員が個人のアカウントでやり取りをすることになってしまいますので、個人情報の保護という点ではかなり問題があるといえるでしょう。
例えば、グループチャットに既に辞めた従業員が入ったままになっていて、そこに今勤めている従業員が患者さんの個人情報を含んだ内容の発言をしたとするとこれは大問題に発展する可能性があります。従業員がそのようなやり取りをしていて仮に何らかの形で情報が漏洩した場合には、雇用者である先生が責任を追及されることもありえます。
医療機関側の対応方法について
このような問題になることを防ぐ方法として考えられるものとしては、職務に関する情報については個人的なアカウントでのやり取りをしないように①従業員から誓約書をもらうこと②就業規則にもSNSの使用についての取り扱い方法・懲戒事由になること等を定めておくことです。
ただし、チャットシステムの利便性は他に替えがたいものがあるのも事実です。ただただ制限をするという方法だけでは、従業員間での利用を止めることは難しいかもしれません。
そのため私の顧問先の一部では、①誓約書②就業規則の他に医療機関側でビジネスユースのチャットシステムを導入してもらっています。
ビジネスユースのチャットシステムですと医療機関側で報告されている内容の把握もできますし、退職者等のアカウントについても医療機関側で管理ができます。
実際の個人情報等の漏洩の可能性を下げるためには、法律的な書面の取り交わしや作成以外に医療機関において代替のシステムを用意してリスクを低減するということも場合によっては必要のように思われます。
実際にはいくつかチャットシステムを試用し、サービスの利用規約を確認して情報等がどのように取り扱われるのかを確認した上でサービスを選ぶことになります。
誓約書、就業規則の作成やチャットシステムの利用規約の確認等を弁護士鈴木沙良夢に依頼することをお考えになる医療機関様は遠慮なくご連絡下さい。
※なお、LINEについてもビジネス版があるようです。