医療訴訟・医療裁判の訴状とはどういうものですか?
訴状とは、患者側(原告)が裁判所に最初に提出する書類です。
この訴状が、裁判所を通じて病院や医師の元に送られることによって医事裁判・医療訴訟は始まります。
訴状を読めば、患者側が裁判でどのようなことを言おうとしているのかということや、どれくらいの金額の支払いを求めているか、といったおおよその部分はわかります。
しかし、訴状自体がかなり特殊な形式ということもあり、訴状を初めて見た先生からは「どこをどう読めばよいのかわからない」というお話をよく伺います。
私の方で、医療訴訟の訴状のサンプルを作成しましたので、このサンプルを踏まえてどこをどう読むべきかについて説明をしていきたいと思います。
訴状の見方、読み方(1)
まずは医療訴訟・医療裁判の訴状の1ページ目に書かれていることについて解説いたします。
訴状自体には特に指定された書式はないのですが、下の画像のような書類が1ページ目になっていることが多いと思います。
※赤字は私が入れた注釈になりますので実際の訴状には書き込まれておりません。
① 東京地方裁判所民事部御中
ここに書いてある裁判所が、裁判が行われる場所になります。
患者側(原告)がどこの裁判所でも自由に裁判を起こすことができるというわけではありません。法律で色々と決められているのですが、医療訴訟・医療裁判の場合、患者側(原告)の住所地を担当する裁判所か病院側の住所地を担当する裁判所かのどちらか、ということが多いでしょう。
訴状には、裁判所の場所や第一回目の裁判が行われる日時(期日といいます。)が書いてある書類が別途同封されています。裁判所によっては多少違いがあるかもしれませんが、「口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状」「注意書」「答弁書」「進行意見書」「書証の提出等についてのお願い」というようなタイトルの書類が同封されていると思います。
② 原告ら訴訟代理人弁護士
裁判を申し立てた患者側(原告といいます)の代理人である相手方の弁護士です。
ここでは「甲野太郎弁護士」が患者側の代理人として裁判を担当することがわかります。場合によっては複数の弁護士が書かれていることもあります。
「甲野太郎弁護士」がどの弁護士会に所属しているか、登録番号がいくつかなどは、日本弁護士連合会のホームページで検索することでわかります。
③ 原告
裁判を申し立てた人のことを原告といいます。ここでは、「乙川一子」氏と「丙山二夫」氏の二名が原告になります。
④ 被告
裁判を申し立てられた人のことを被告といいます。ここでは、医療法人(病院)である「医療法人丁原会」と「丁原次男」先生の二名が被告になっています。「丁原長男」先生はあくまで「医療法人丁原会」の代表者である理事長として表示されているだけであって被告にはなっていません。
おそらくは、原告側は、「医療法人丁原会」が開設している病院で「丁原次男」先生が担当されていた患者さんの件について「医療法人丁原会」と「丁原次男」先生両名を相手として裁判を起こした、のだと考えられます。
⑤ 損害賠償請求事件・訴訟物の価額
「損害賠償請求事件」との表示は事件の種類を表しています。特に気にする必要はありません。
重要なのは、「訴訟物の価額」です。ここに書かれている金額が患者側(原告側)が病院・医師側(被告側)に支払いを求めている金額の合計であることが多いです(複雑な訴訟では違う場合もあります)。
「ちょう用印紙額」は、原告側が裁判を起こす際に裁判所に収めた手数料(原則として収入印紙で支払います)を書いたものです。先生側は気にする必要はありません。
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なお、医療事件・医療裁判の患者側代理人としてのご依頼はお受けしておりませんのであしからずご了承下さい。