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医業未収金の回収(医療費の未払い金の回収)
医業未収金問題(医療費の未払い金の防止・回収)は医療法人、病院を大きく悩ませている問題です。 医業未収金は四病院団体協議会等の加盟病院の総計だけでも年額370億円発生しているといわれています。
医業未収金に対する基本的スタンス
医業未収金に対するスタンスは、(1)発生させないことを第一とし、(2)それでもなお発生してしまった場合には速やかに回収を図る、ということになります。
医業未収金の時効
医業未収金の時効は3年です。つまり、債権を請求できるようになってから3年間を経過してしまうと、相手が「時効なので払わない」と主張してしまうと債権は消滅してしまい回収することはできません。ただ、医業未収金については、この時効の期間にかかわらず早めに回収に着手する必要があります。
例えば、患者さんが退院したばかりの時は病気が治ったということで医療機関に対する感謝の念もあり支払いを受けやすい状況といえます。しかし、退院から2年半程度たってからいきなり支払いの請求を受けたとします。このような場合には、たとえそれが法律上正しい請求であったとしても「なぜ今頃」と思う人も出てくるでしょう。
このように、医業未収金は、いわば生鮮食料品のようなナマモノであって時間がたてばたつほど回収が困難になっていくという性質を持っています。
医業未収金の実際
医業未収金の回収の依頼を受けて実際に債務者と交渉をしてきた実感としては、未払の理由の多くは「経済的な困窮」にあるということです。このような方の場合、住居を変えていることもあり病院・医療法人側で住所を特定することは困難です。そのため弁護士等に依頼して転居先の調査などして請求をしていくことになります。
経済的な困窮以外での未払いは、支払い能力があるにも関わらず支払わないという債務者です。このような債務者は、「病院での職員の態度が悪かった」、「下手な手術をされて余計にひどくなった」など病院側に非があると述べて支払いを拒むことが多いという印象です。
弁護士に依頼した場合の回収方法
弁護士に依頼した場合どういう流れで回収を進めていくことになるのか説明いたします。
1 請求書(内容証明郵便等)の作成・発送
弁護士は、医業未収金の存在を証明できる証拠(請求書等)を確認させていただいた上で、請求書の作成・発送を行います。その際に内容証明郵便を使用する場合もあります。内容証明郵便は(1)何月何日に(2)誰から誰に対して(3)どのような内容の文書を送ったか、ということを日本郵便が証明してくれる形態の郵便をいいます。訴訟が見込まれるような案件では内容証明郵便を使用することが比較的多いかと思います。
このようにして弁護士の名前で請求書を送り未収金を支払うよう債務者に求めます。請求書では期限を切って支払っていただきたい旨を書き添えて、弁護士宛に連絡がほしいということも書いておきます。
債務者が分割や減額の申し出をしてきた場合には病院側と協議した上で、応じるか否かを決めることになります。
あまりに長期間の分割による和解や多額の減額(医療費についてはそもそも減額を認めて良いのかといった問題もありますが。)を認めると、病院・医療法人自体の評判に影響することもありますので事案に応じて検討する必要があります。医療機関側は弁護士とよく協議をしてその点を詰めていくことになります。
2 電話での督促
内容証明郵便が到達しているにもかかわらず全く反応がないという方もいます。そのような方に対しては、電話番号等がわかっている場合には弁護士が直接連絡をいたします。
このように直接電話をすると債務者の方は様々なことをおっしゃります。ただ、私の経験では前に書いたように経済的困窮をのべる方が非常に多いという印象です。一括での回収を前提としながら交渉を致しますが、分割での回収も視野に入れておいたほうが現実的な場合もあるでしょう。
3 訴訟を起こす
このような督促をしても一切連絡がないような場合には、訴訟の提起を考えざるを得ません。債務者が実際に治療・入院等をしていて債権が発生していることが明白であれば裁判で勝訴判決をもらうことができるでしょう。
しかし、訴訟は費用がかかりますし、病院がかつて患者さんであった人を訴えるということになるわけですから、病院の体面といった金銭面とは別の点も考慮しなければなりません。また、裁判で勝ったとしても債務者に財産がない場合には結局のところ回収することはできません。
一方で、少ない金額でも訴訟まで行うということにより「あの病院は法的手段をしっかりとってくる病院だ」という評判を得ることもあります(当然マイナス面もあります)。
相手の銀行口座がわかる場合(まれです)や、不動産がある場合、勤め先から給与を受け取っている場合などはそれらに対して強制執行をかけることができますので債務者が任意に支払わない場合でも回収をすることができますが、実際にそこまでするのかという点にいては医療機関としてはよく考える必要があるでしょう。
弁護士は院長先生や事務長と十分に協議をした上でどこまで行動するのか決めることになります。
当事務所に依頼した場合の費用
当事務所に医業未収金の回収を依頼する場合は、医業未収金の回収だけを依頼する、というよりは顧問契約を締結していただきその顧問契約の範囲内で対応するという形態を取ることが多いと思われます。
もちろん医業未収金の回収だけについてもお見積を出すことはできるのですが、そのような場合の見積金額は医業未収金総額や回収可能性と比較して考えると高コストになりがちです。医業未収金は少額なことが多いのですが、弁護士が行う回収のプロセス・時間自体は他の業種の一般的な数十万、数百万といった金額の未収金の場合とあまり変わらず、どうしても請求のためには法律事務所としてはある程度の金額を見積もらざるをえないという事情があるためです。
そのため当事務所では顧問契約を締結していただいた医療機関様の場合につきましては医業未収金の請求手続については実費のみのご負担で請求業務をさせていただいております(請求件数が同時に20件を超えるような多量にのぼる場合は別途)。この場合、弁護士による顧問サービスを受けつつ、そのサービス範囲内ということで医業未収金の回収を依頼することができます。医業未収金の金額の多寡や件数によるコストの増加を気にする必要が無いため、未収の可能性が出た時点で相談をすることもでき未然に未収金の発生を防ぐこともできます。是非ご検討ください。