医療事件

患者の代理人からカルテ・診療録等の開示を求められました。

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患者の代理人からカルテ・診療録等の開示を求められました。

Q.患者さんの母親からカルテの開示を求められました。代理人からのカルテの開示請求になると思うのですが、これに応じてもよいのでしょうか? また、実際に開示をする場合にどのようなことに気をつければよいのでしょうか?

カルテの開示は原則として本人とされている。

カルテの開示については、日本医師会の「診療情報の提供に関する指針」及び厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」の2つのガイドラインがあります。
この2つのガイドラインによると、カルテ・診療録等について開示を求めることができる者については原則として本人としています。
それでは、上の例のように患者さんの母親が病院・クリニックの窓口にやってきて「子供のカルテを見せてもらいたいのですが?」と行った場合には、医療機関としてはどのように対応すればよいのでしょうか。

母親の開示請求が認められるかは患者の年齢や疾病の内容によって変わる。

ガイドラインにおいては、本人以外が開示を求めることができる場合として、

・患者に法定代理人がいる場合には、法定代理人。ただし、満15歳以上の未成年者については、疾病の内容によっては患者本人のみの請求を認めることができる。
・患者本人から代理権を与えられた親族及びこれに準ずる者

というようなことが書かれています。これは具体的に、どのように考えればよいのでしょうか。
まず、法定代理人についてですが、患者さんが未成年の場合、患者さんの母親は親権者として法定代理人にあたります。そのため、母親であれば開示を求めることができますが、患者さんの年齢が15歳以上の場合には、疾病の内容によっては患者本人のみが請求を認めることができるとされています。これは未成年であるとはいえ、15歳以上になった場合にはなるべく個人の意見を尊重しようという考えによるものだと思われます。
そのため、この疾病の内容ですが、おそらくは患者本人がたとえ法定代理人である両親であっても病気の内容を伝えることを拒むような場合で、両親によってカルテの内容が把握されることの利益よりも、開示されることによる患者さん本人の不利益が上回るような状況であると思われます。頻繁に直面する事態ではないと思われますが、特に患者さんが事前に親へのカルテの開示を拒んでいるなどの具体的な事情がある場合には、慎重に判断をする必要があるでしょう。

また、患者さんが成人している場合には、母親であるというだけでは開示を求めることはできません。患者さんの母にも患者本人の委任状を取ってもらって提出してもらう必要があります。これによって、「患者本人から代理権を与えられた親族」にあたるとして診療記録等の開示をしてもよいことになります。

カルテを開示する際にどのような書類の提出を求めるのか?

まずは、診療記録等の開示申出書を書いてもらいます。そして、自身が診療記録の開示を求め得る者であることを証明してもらうことになります。母であるということを証明するための戸籍謄本の写しが必要になるでしょうし、患者さんが成人に達しているのであれば患者さん本人の委任状原本の提出を求めることになります。
後日、患者さんとの間で問題が発生することを防ぐためにも、患者さんが通院中である、あるいは現に入院しているというような場合には、ご両親から開示の申立があることについて、患者さん本人に何らかの確認・了承を取っておく方がよいと思われます。

病院・診療所・クリニックにおいて、診療記録等の開示申出書、委任状等のひな形の作成、あるいは具体的事例における開示の法的リスクについての判断をお求めになる場合には、当事務所までお問い合わせ下さい。

(平成27年7月22日 文責:弁護士鈴木沙良夢)
なお、本文の内容は作成された当時における法律や規則に基づいております。その後の法改正などにより現時点では的確ではない内容となっている場合があることをご了承ください。

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